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cognoscenti(こぐのん) notes (mainly classical music)

全日本吹奏楽コンクール結果記事を嘲笑する

いつのまにか全国大会中高と終わってました。で社会面にとりあえず結果の記事が出るわけですが、

11校が金賞 全日本吹奏楽コンクール・高校の部


 第55回全日本吹奏楽コンクール全日本吹奏楽連盟朝日新聞社主催)高校の部が21日、東京都杉並区の普門館で開かれ、29校が出場、11校が金賞に輝いた。

 11校が選ばれたのは、98年以来9年ぶり。中学の部同様、オーケストラの編曲作品が自由曲の大半を占めた。フランス近代の名作、ラベルの「ダフニスとクロエ」に4校が挑むなど、吹奏楽の新しい表現の領域に踏み込もうとする意欲的な演奏が目立った。
 福島の磐城高は、指揮の根本直人教諭自ら編曲したバルトークの「中国の不思議な役人」を演奏。アクセントに富む劇的な難曲を手中にして、聴衆を圧倒した。
 埼玉の伊奈学園総合高は、男女の愛を官能的に描いたリヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」を本コンクールで初めて演奏。ウィーン世紀末をほうふつとさせる多彩な響きを丁寧に織り上げ、金賞に輝いた。やはり金賞の東京・片倉高は三善晃作曲「交響三章」の第3楽章をとりあげ、繊細な和声のうつろいを複雑なリズムのなかで表現、完成度の高い演奏で喝采を浴びた。福岡工業大付属城東高はここ数年ブームの「トゥーランドット」をめりはりのある表情で新鮮に聴かせ、金賞を手にした。
 審査員の秋山和慶さんは「技術の進歩は著しい」と驚き、「『コンクールが終わったらこれで終わり』ではなく、合唱やオーケストラといった、より深い音楽の世界への入り口に立ったと思ってほしい」と話した。

 成績は次の通り。(以下略


http://www.asahi.com/culture/music/TKY200710210141.html

おそらく各校の記述は各位地元の代表校だと思う(関西は大阪3校)

「11校が選ばれたのは、98年以来9年ぶり」とあるのは、例年10校弱は金賞で約1/3は取る、ということかぁ。まあ検証する必要もないけど、思わず「おいおい」と言ってしまったのは次。

中学の部同様、オーケストラの編曲作品が自由曲の大半を占めた。フランス近代の名作、ラベルの「ダフニスとクロエ」に4校が挑むなど、吹奏楽の新しい表現の領域に踏み込もうとする意欲的な演奏が目立った。 

これはいただけないwww
オケものが大半で、「ダフクロ」が多くて、それが「新しい」とは…。これ書いた人は勉強不足か門外漢か?「ダフクロ」なんて何年来のコンクールベストセラー?そしてオケものが演奏されないコンクールってありました??嘲笑せざるを得ない。
たとえ、「表現の新しい領域に踏み込む」ようなのだったら、「ふむ、新しい特殊奏法満載だったのか?」となるかもしれんが、演奏曲目がオケ物で「ダフクロ」が多いことが「新しい表現の領域に踏み込」むことには決してならない。むしろ未だに傾向がこうであること(詳細略 を皆さん大いに嘆いて欲しいわけで。
審査員のコメントがまたその「新しい表現の領域に踏み込」むという認識をを良しとするのか、『合唱やオケも聞いて新しい領域を開拓してね』というより、『吹奏楽単体では閉塞的だよね』、と勘繰りされかねないよー。もっとも文字通りにはコンクールだけ燃え尽きる人をなじってるわけだけど。
まあこれには吹奏楽自身の歴史その他云々に因るのでしょうが(教育的観点からオーケストラ作品に触れるべき、というのはなんか違和感ありますね。やってる事が遠回りというか)。


一応中学の部も確認。

8中学が金賞受賞 全日本吹奏楽コンクール・中学の部


 第55回全日本吹奏楽コンクール全日本吹奏楽連盟朝日新聞社主催)が20日、東京都杉並区の普門館で始まった。この日は中学の部。全国から選ばれた29校が演奏、8校が金賞に輝いた。21日は高校の部が開かれる。
 吹奏楽人気を反映して中学の部には、昨年より100校多い6649校が参加。予選を勝ち抜いた29校はいずれも「うますぎて困る」と審査員泣かせの実力を披露した。
 昨年銀賞だった奈良の生駒市立生駒中は、ショスタコービチのオペレッタに挑戦。テンポも曲想も頻繁に変わる難曲を、気迫の演奏で一息に聴かせ、金賞を手にした。
 トリを飾った千葉の習志野市立第五中も金賞。有名なレスピーギの「ローマの噴水」を演奏し、繊細な楽器の扱いで深い余韻を残した。
 部員数50人前後の学校が多い中、広島の東広島市立黒瀬中は33人で銀賞と健闘した。トリノ五輪以来、演奏団体が増えた「トゥーランドット」。緻密(ちみつ)なアンサンブルで満場の拍手を受けた。
 今回際だっていたのは各校の選曲へのこだわりだ。吹奏楽用に書かれた曲を自由曲に選んだのは4校のみ。残る25校は、交響曲ピアノ曲などを吹奏楽用にアレンジした作品をとりあげた。
 審査員の平野公崇さんは「原曲の響きに忠実である必要はない。各校の個性に合った音楽を作れているかどうかが重要」と話している。

 成績は次の通り。(以下略


http://www.asahi.com/culture/music/TKY200710210078.html

オリジナルが少なくてオケものが多いことが「こだわり」なんでしょうか。うはぁー、嘆息。こちらの審査員コメントは言い得て妙。


仕方ないので、独断で今年の正しい「新しい」と思われるものを、自由曲のみでピックアップしてみる。(以下こちらより)

13 中国 岡山県 津山市立北陵中学校
 4/喜歌劇「伯爵夫人マリツァ」セレクション (E.カールマン/鈴木英史)  

これは新しく…ないか。オペレッタセレクション路線が目の付け所勝ちというだけ。

8 北海道 札幌地区 札幌市立あやめ野中学校
 4/「スペイン組曲」より ヒタネリアス、アンダルシア、マラゲーニャ (E.レクオーナ/高木登古) 

編曲だけど、上記記事のピアノ曲とはこのこと。さらに課題曲の作者が編曲、と。
エルネスト・レクオーナ - Wikipedia
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14 四国 高知県 高知県立高知西高等学校 
 3/レッドライン・タンゴ (J.マッキー) 

今んとこ最新のABAオストワルド賞受賞作、と。他3団体。譜面が出たと。
Redirect

 東海 愛知県 光ヶ丘女子高等学校 
 3/バッハの名による幻想曲とフーガ (F.リスト/田村文生) 

オルガン曲(だけどこちらによればピアノ曲の方の名前?)。オケものより、オルガンの方を開拓した方が良いのでは? 編曲者解説↓
http://worldwindbandweb.com/brainmusic/7.1/YDAL-B02/
バッハ:フーガの技法

2 東海 静岡県 ヤマハ吹奏楽団浜松 (指揮/須川展也) 
 3/幸いの龍 (長生淳

これだけ、人的に。

15 関西 滋賀県 大津シンフォニックバンド 
 3/パンソリック・ラプソディ  (高昌帥) 

しっかり曲目解説なさってます。
http://www.osb.jp/dir18-1.html →http://www.osb.jp/dir18-2.html



締めとして言っとくならば、現在中の人はオーケストラのみを聴き、吹奏楽に対する愛着がなくなってしまっていて(一般バンドはまだやってるけど、楽器を叩きに行ってるためだけ、という感じ)、それはまだまだ管弦楽の勉強不足というのもあるが、純粋に表現の枠の画一さにうんざりしてきた、ということかな。吹奏楽が己自身として発展するならば己自身のレパートリーでなくては、ということだろうか。


とまあ来年の締めの演奏会告知後、今後吹奏楽に言及することはなくなるやもしれん、とは思ってる。