cogno-SIC

cognoscenti(こぐのん) notes (mainly classical music)

大フィルの「特権意識」とは

とりま引用 後日コメント加筆予定

 鳴りやまないカーテンコール。一度は舞台袖に帰った指揮者が何度も呼び戻され、楽員と一緒に笑顔で応える。ところが午後9時ごろになると楽員同士が目配せを始め、舞台を去っていった。
 「あと1曲アンコールをしてほしいのに『超過勤務になるから』と断られた。サービス精神があまりにもかけているのではないか」。コンサートを依頼した興行主は憤った。
 大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)のコンサートの一幕だ。
 大フィルの楽員の勤務時間は1日6時間だが、午後9時を過ぎると15分間で約2千円の超過勤務手当が発生する。
 興行主は「どこのオーケストラにも組合があるのは知っているが、大フィルの組合は特権意識が強すぎる。フィナーレの大切な時間帯に残業手当を設けること自体が問題」と疑問を投げかける。
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 大フィルは、市から”特別扱い”されてきた歴史がある。昭和22年に誕生した大フィルは、世界的な指揮者、朝比奈隆(1908〜2001年)が結成。ベルリン・フィルも指揮した朝比奈のカリスマ性で、経済界からも多くの支援を得続け、大阪市からの補助金は35年から続く。平成3年には市からの補助金約14億円で練習のための「大阪フィルハーモニー会館」(大阪市西成区)も建設した。
 約10年前、関西フィルハーモニー管弦楽団NPO法人になった際、市に補助金を打診したが「大フィル以外は抱えない」と断られたという。
 「なぜ大フィルだけが補助金を特別に受けることができるのか」
 5月31日、大阪市役所内で繰り広げられた関係部局とのヒアリング。橋下市長は、日本センチュリー交響楽団関西フィルなど在阪のプロオーケストラの名前を挙げ、公平に支援することを強調した。
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 作曲家の三枝成彰さん(69)は「現在の大阪の文化は崩壊している。大阪の人たちが文化、芸術を必要としていないからだ。ただ芸術家も既得権益に守られ、愛されるための自助努力を怠ってきたのではないか」と指摘する。三枝さんは約45年前、東京芸大の大学院生だったころ夜行列車で大阪にコンサートに駆けつけたことがある。「当時、日本のクラシック音楽は、西高東低で大阪が中心だった。それを支えていたのが朝比奈さんであり、大フィルだった」と語る。
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 作曲家の三枝成彰さん(69)は「東京では15分で完売するチケットが大阪では売れない。そういう土壌で生まれたのが、橋下市長。大阪の人たちはもっと芸術や文化に勤勉になるべきだ。芸術や文化を支えるのは最後は市民だということを忘れてはいけない」と話した。


産経新聞大阪本社版6月25日付朝刊1、3面「大フィル 特権意識強く ナニワ文化の遺伝子−消滅か存続か 上」、27日付朝刊3面「芸術の支え 最後は市民 ナニワ文化の遺伝子−消滅か存続か 下」より
(この連載は亀岡典子、坂下芳樹、豊田昌継、田野陽子、安田奈緒美が担当)との署名