cogno-SIC

cognoscenti(こぐのん) notes (mainly classical music)

小編成用課題曲考(森嶋洋一氏)

大津シンフォニックバンド(以下OSB)音楽監督の森嶋氏が、今年の課題曲「風之舞」について、また今年の全国コンクール大会の感想など書かれています。「風之舞」の曲分析はなかなか面白かった。今年はあの大人数の金管をTp.3, Tb.3, Tub.1に減らす英断をしたという。すごい。
去年OSBは「風之舞」同様小編成向けの課題曲「虹色の風」(松尾善雄作曲)と「写楽」(委嘱作品高橋伸哉作曲)演奏して全国銀賞だったことも書かれているけど、同じく去年「虹色の風」とあの「ミス・サイゴン」(デメイ編曲版)を演奏した札幌白石高校吹奏楽部は50人編成だったものの金賞。よく演奏を覚えているのだけれど、ほんとに小編成用?といわんばかりの元気なサウンドで、他のぼんやりとしたサウンドの団体と一線を画していた。名門の白石の方は普門館の響き方をよく理解していてからか。中高生の普門館は毎年同じだけど一般の部は毎年ホールが変わるからねぇ。
意外とユーモアあるなぁと思ったところ。

風之舞」は、人数制限にも満たない、或いはダブルリード奏者もいない中学生バンドでも奏することができるように意図して作曲されている。言い換えれば元々80人編成で奏することを前提として作られていない。管弦楽の世界で言えば、古典派曲を奏するような編成と言える。モーツァルトのシンフォニーを4管編成のような大管弦楽で奏しては、いくら演奏が巧でも異質な音楽になることは必然である。同様に「風之舞」を大編成のフルバンドで奏しては本来の特質は損なわれると思われ、場合によっては「暴風之舞」と嘲弄されかねない。

「暴風之舞」って(大笑。

・「風之舞」の表現〈2〉…
 「Dancing in the Wind」の英訳が示すとおり、この場合の「風」から受ける総体的なイメージは、透明感と質量の軽さであろう。しかし、単に金管楽器を最小限に減らすだけではこの本質に迫ることができない課題が山積みされた。一例を挙げれば、9小節目からの「p」から突然「f」になる箇所は、演奏の印象度を決定づける難所である。w.w.群のモチーフ、Tp. Tb.のロングトーン、Hr.のシンコペーションからなる三声と打楽器群は、譜面上からは一見平易な印象を受けるが、そのままやってしまうと騒然とした響きでしかならず、場合によっては耳を塞ぎたくなるような暴徒化音楽に陥ってしまう危険性を秘めていたのである。「最初のTp. Tb.登場」なるが故にそれを強調したいところだが、強調しすぎると逆効果になる。冒頭部から奏する一連のw.w.群のモチーフを主旋律と扱い、Tp. Tb.は、w.w.群の音符の隙間に出来た傷を補修する目地的役目と割り切るべきであったのではないか。同様に、この曲全体の「f & p」の扱いは、各楽器の特性を十分計算に入れた上で構築しないととんでもない演奏になってしまうことを勉強させてもらった。特に、十分な響きが伴わない木管楽器の「p」は悲惨だし、響きわたる金管の「f」はうるさすぎることなど。

この部分を母校吹奏楽部はかなりソフトに、いや全く強調せず前奏の弱さのまま突入して自然な形に仕上げていた。さすがです、先生(?)。


ここのコラムはいつも勉強になります。
また2000年の全国大会での「大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)」の話も少し出てくるけど、この年の課題曲「をどり唄」(柏崎真一)と自由曲「大阪俗謡による幻想曲」(大栗裕)のOSBの演奏はまさに名演ですよ。「大阪俗謡」はこの演奏が一番好き。あとOSBでは98年の「シンフォニア・タプカーラ」第3楽章(伊福部昭)も素晴らしい。