cogno-SIC

cognoscenti(こぐのん) notes (mainly classical music)

「Harrison's Dream」(Peter Graham)の心とは(1)(編集途中)

http://d.hatena.ne.jp/intelligentsia/20040710#p7


少し前紹介した東京佼成ウインドオーケストラのミッドウエスト・クリニックでのライブCDを購入して、「Harrison's Dream」(Peter Graham)を全曲聞いた。現在そのトラックだけリピートかけっぱなし(笑
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457688/496877/#506970


今回はこの曲が描き出すもの、作曲者がこの曲に込めた思いを私なりに考えてみようと思う。



まず、「Harrison's Dream」作曲の背景、初演、楽器編成、グレーアムの経歴などの基本情報をこちらで確認。
http://www.mmjp.or.jp/power/bp/sp/higuchi/n12/01.htm


次に上記CDのライナーノーツから、「Harrison's Dream」の紹介部分より曲構成の部分だけ引用すると、

したがって、音楽は主として1707年10月22日の夜の混乱と悲劇と、ハリソンの工房の忙しさが一緒に描かれています。
音楽はそのため機械的で、発明に悩まされるハリソンの悪夢と船の難破の両方を表現する賑やかで忙しい第1部、オーボエのソロで死者を悼むゆっくりした第2部、それに続く鐘の部分(これは悲劇の起こった10月22日の夜8時を知らせる船の鐘を描いている)、そして再び忙しい第3部で構成されています。
また第1部では中間部でゆっくりして、バスーンオーボエ、ホルンのソロが聴かれますが、これはハリソンのロマンチックな性格を表現しています。
第2部のハープ伴奏によるホルンなどのソロも印象的です。
第3部のコーダでは、第2部の美しい旋律も再現されます。


『Chicago Live』(KOCD-8010) ライナーノーツ P.11
(執筆者はおそらく秋元紀夫氏と思われる)

次にブラスバンドに関する情報を発信しているhttp://www.4barsrest.com/から、2004年度European Brass Band Championshipsの特集記事内の「Harrison's Dream」の紹介部分を読む。
(上記CDのライナーノーツを参照すれば事足りるのだが、ライナーノーツは作曲者自身による曲解説は少し紹介されているのみなので、全文紹介されているこちらの方を参照する。)
via:http://d.hatena.ne.jp/pantomime/20040716#p9
http://www.4barsrest.com/articles/2004/art387f.asp


パラグラフごとに要点を整理してみると、
(1st)初演について。今なお人気があり難曲であること
(2nd)1707年の軍艦難破事件と、時計職人ジョン・ハリソンからインスピレーションを得た曲であること
(3rd)グレーアム自身による解説:難破事件の詳細
(4th)同上:経度測定計器の発明がハリソンの夢であった、ということ
(5th)同上:(下記にて引用)
(6th)同上:(下記にて引用)
(7th)2001年のブラスバンドヨーロッパ選手権後にもこの曲がしばしば取り上げられたこと


ここで注目したいのは、5パラと6パラの部分。

This work reflects on aspects of this epic tale, brilliantly brought to life in Dava Sobel's book Longitude. Much of the music is mechanistic in tone and constructed along precise mathematical and metrical lines. The heart of the work however is human ? the attraction of the £20,000 prize is often cited as Harrison's motivation.


However, the realisation that countless lives depended on a solution was one that haunted Harrison. The emotional core of the music reflects on this and in particular the evening of the 22nd October 1707."

未熟な英語力で意訳に近い要約をすれば、

この曲はデーヴァ・ソベル著『経度』に影響を受けている。曲の大部分は調において機械的で、数学的な韻文のラインに沿って構成されている。しかしこの作品の中心は人間(ハリソンのことだろう)ではないだろうか?(一般に)賞金二万ポンドの魅力がしばしばハリソンの動機として引用されるが、無数の命がこの発明にかかっていたという事実もハリソンを動機付けた1つの要因であろう。この曲の情緒的な部分は上記の事実と、特に1707年10月22日の夜を表している。


つまりここの記述から、
無数の命を救うために計器の発明に取り組んだハリソンの生涯、夢にグレーアムが感動?し、その感動が「Harrison's Dream」を作るきっかけとなった
と推測される。



(続きは後日)