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cognoscenti(こぐのん) notes (mainly classical music)

理論経済学者 阪大名誉教授 森嶋通夫氏死去

学問を志そうとしている者にとって非常に残念な訃報です。ご冥福をお祈りします。


実は私が社会学を志そうと思ったのは思想としての近代経済学 岩波新書 新赤版(321)/森嶋 通夫(著)を京大経済学部論文型(略して京経)の対策として読んだことに由来します。森嶋氏は以下のように記しています。

…今後の何世紀かに可能な社会主義は、決して一党独裁のそれでありえず、複数政党間に政権の受渡しが行われる、民主主義的な社会主義でなければならない。そうすると上部構造内で、エリート間に競争や構想が必ず行われる。こういう経済を分析するには、本書で取り上げた人たちの中では、高田、ウェーバーシュンペーター、パレートの社会学系の経済学が役立つであろう。私は、特に高田の勢力論やウェーバー−の官僚制の研究を発展させ、経済学内に取り入れることが必要であると思う。いずれにせよ、次の世紀では経済学と社会学は非常に密接な学問になるに違いない。


思想としての近代経済学 岩波新書 新赤版(321)/森嶋 通夫(著) 終章:若干の結論的覚え書 P245より

この本の大まかな内容は、経済学はもちろん社会学で著名な学者をとりあげて近代経済学の思想面を論考しています。私がなるほどと思った部分は特に最終文です。私はこの本を読んで、社会学の素養はますます必要になることを痛感し、今でもそうだと考えています。(またこの本では森嶋氏はマルクスのに一章を置いています。マルクス経済学の一辺倒な批判がなされてしまいがちですが、マルクスの資本主義分析は他の追随を許さないところがあるのは確かです。)この本は経済理論を一通り学んだ上でまた読み返さなくてはならないと思ってます。


日本に世界でも立派に通用する優秀な学者がいたことを誇りに思い、森嶋氏の日本のアカデミズムの閉鎖的体質への批判をかみしめ、学問に邁進していきたいと改めて思いました。