学問としての音楽
2年前までは日常生活に組み込まれていた図書館通いも、住居を移し、移動手段の主体が徒歩になったことで、随分とご無沙汰になっていた。その間に私費で教養具財を調達していくにつれ、公的な図書館に置かれるような沢山の手によって汚染された品など手にとってたまるか、とも思うようになったのだが(経済的状況の比較的改善による思想的な右傾化?)、公私のバランスを取ろうと、久々に行ってみた。
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23日に逝去されたSir Malcolm Arnold追悼記念に。
借りてきたものを改めて見直すと、「ああ、私は相変わらず、学問としての音楽への憧れが、醒めないな。」と嘆息する。その理由は、大学における所属が「文学部人文学科言語文化・思想領域」となっており、「音楽学」の文言がちっとも見当たらないためである。とは言えども、同学部が外部の識者に学部教育の評価を依頼したものを見たらば、そこには「リベラル・アーツ」の文言があり、既存学問にとらわれない柔軟な教養を身に付ける、という学部の姿勢を窺い知れるので、所属が何であれ、独流の音楽学を勝手にやっておけばいいのではある。権威による評価は皆無だが。
それとは別に、私は「人文学科」という所属も実はあまり気に食わない。というのも、勤務先が「科学医療」(狭義の自然科学)を扱う部署なため、理路整然とした自然科学の諸学問に対して、人文学はなよっとしていて不快感を生じさせる。反証不可能性が漂っていて、体系的でないのである。「人文科学」と記述したりもするが、「人文」が「科学」的ではないので、「科学」という文言をつけて学問足ろうとする人文学に対して、私は「何とおこがましい!」と怒りたくなる。
また、社会科学が実に体系的に形作られていることを、経済思想史の幾つかの著書から思い知らされているので、社会科学には個人的な親和性を抱いているのだが、繰り返すように、所属は文学部、教養としてしか社会科学をしてはならないことになっている。
以上のように、既存の学問に対してどれもこれもいちゃもんを付けたがる小生が目に付けたのが、「学際的」「相関科学」等の、既存の学問を横断して新たな知を創造しようという試みである(慶応SFCとか、東大教養学部とか)。ちょうど電気専門の父に社会学部卒の母を持つ私は、その体に文理融合の血が流れている、と豪語してはばからないのだが、とある先生に大学進学に際し忠告されたのは、
「学際的な試みは既存の学問の手法を応用した試みであるから、既存の学問の手法を修得せずにこれを行おうとすると、週刊誌の斜め読み程度のことしかできない。」
と、既存の学部に進学することを薦められ、それを心得て基本の樹となる手法を修得しようと意気込むのだが、核心的に「これが基本の樹だ!」と思える手法が見つからず、今日に至る。
「究極的に、根本的に、諸学問そのものを規定する哲学が、本当の手法だ。」と言い訳をして。